2017/11/16

台湾の大学への進学は、学費が安く中国語と英語が学べてメリットしかないのか?



先日Twitterでこのツイートが私のタイムラインで話題になっていました。

”志望校は台湾に!” 〜進学熱の背景は〜




朝の情報番組で台湾の大学へ進学する沖縄の高校生が増えているという内容でした。



この番組で紹介されていた留学説明会は、日本各地で数校の校舎を持つ台湾大学進学予備校が主催しているものでした。

番組自体もYouTubeにアップされているので、観ていない方はこちらからご覧いただけます。

https://youtu.be/j0cKJwYA7d8?t=17m45s
(埋め込み形式ができない動画なので、直接リンク先からご覧ください)


台湾の大学へ進学することのメリットとして、進学を斡旋する会社は「学費が安い」ことと、「中国語と英語が身につく」点をあげています。

動画では沖縄の高校生にスポットが当てられていたため、沖縄からは内地へいくよりも台湾の方が近いこと(飛行機で1時間の距離)、気候が近い点のほか、中国や台湾からの観光客も多く、中国語の需要が高い点がメリットとしてあげられていました。

これに対して、Twitter上の台湾在住者、在学者などからいくつか意見が上がりました。

今回の記事では、台湾の大学進学について各種の意見をまとめていきます。

台湾の大学は学費が安い

動画や斡旋会社のサイトにある通り、台湾の公私大学は日本よりも学費は安いです。

例えば国立台湾大学の場合は、現地の学生と比べ外国人学生は学費が高く設定されていますが、それでも一学期約 NT50,000-60,000 (¥185,000〜¥222,000)程度です。

※レートをNT1=¥3.7で計算した場合

四年間の学費は¥1,480,000〜¥1,776,000程度になります(八学期)。

日本の大学のように入学金も必要ありませんし、学費の安さはメリットであると思います。

台灣大學就學費用
http://www.oia.ntu.edu.tw/ch/study-at-ntu/why-study-at-ntu/fees

これに別途生活費がかかります。大学の寮に入れば家賃を抑えることができますし、人によって変動の大きい部分です。

私は外部のアパートに住んでおり家賃は月にNT9500 (¥35150程度)です。食費を含めても月にNT20,000 (¥74,000)あれば生活ができます。

単純に計算すると、一年の生活費はNT240,000 (¥888,000)

四年間では生活費として NT960,000 (¥3,552,000)程度かかる計算になります。もちろん住むところや何を食べるか、どのような生活をするかで大きく費用が変動します。

これにさらに保険や書籍費、交通費などがかかってきます。

その他の費用についてはこちらの記事でも紹介しています。


この記事でもリンクを貼っていますが、費用の細かい部分まで記録されているナカジマチカさんのブログは必読です。

語学留学の例ではありますが、ビザや航空券の手配から、生活にかかる様々な費用まで網羅されており、台北での生活にかかる費用がわかりやすくまとめられています。


台湾の大学へ進学すると中国語と英語が身につく?

台湾の大学では基本的に中国語で授業が行われます。

全て英語で学位が取得できるコースも一部存在します。それについては後日ブログ記事にしようと思います。

繰り返しますが、基本的には台湾の大学で学位取得を目指すならば生活面でも学業面でも中国語が必須となります。

そのため、「中国語や英語をマスターするために台湾の大学へ行く」というのを目標にすると、学業の面でつまづく可能性があります。

語学力向上のために台湾の大学へ進学することについて

台湾の大学で講義を受け、課題をこなしテストで合格する過程で中国語能力は間違いなく向上するでしょう。

ですがそもそも一定レベルの中国語能力がないと、大学の授業についていくのは難しいです。








ここであがっている意見をまとめてみます


  • 台湾にいるだけで自然と中国語が身につくわけではない、努力が必要
  • 入学の時点で中国語ができないと授業の内容がわからない
  • 中国語"を"学ぶ、ではなく中国語"で"学ぶ


台湾の大学に入学する際に、一定レベルの中国語能力を求められますので、全くのゼロで入学する人はいないと思いますが、語学力はどれだけあっても足りるとは言えません。

また、語学力向上だけが目的なら大学へ進学する必要はありません。独学でもある程度はできますし、語学留学という方法もあります。

大学は専門知識や思考力を培うところ

次に重要なのは、何を学びに大学へ進学するのかという点です。

台湾大学に入学申請する場合、申請の時点で学科を決め、学習計画書を書くことになります。自分がどんなことを学びたいかを自分の中で明確にさせておく必要があります。






大学の授業について行くためには一定の語学レベルが前提です。周りはネイティブなのでそれだけで彼らに有利な環境です。そこで学ぶには強いモチベーションが必要になってきます。

また台湾の各大学には外国人枠があり、基本的には書類審査で入学ができるのでレベルの高い大学に入れる可能性もあります。

こちらの記事でも書いていますが、レベルの高い大学に入ると自分の学力不足を常に感じることになります。これは大学院に進学した今ではさらに強烈に感じています。

学業の面では、自身の学力の他に専攻の学科にどれだけ興味を持って学べるかという点があります。

私にも学部時代や修士の現在でも興味のない必修科目は一部ありますが、全体を通して自分の学びたいことと専攻する学科にギャップが大きいと、母語ではない環境で学ぶモチベーションに影響を与えます。

まとめると

  • 大学で何を学びたいかを明確にすること
  • 母語環境ではないので外国人には不利
  • レベルの高い大学だと、言語の問題以外にも学力の面でも壁にぶつかる
  • それでも四年間(以上)そこで学びたいモチベーションを持てるか


台湾の大学留学に関する情報を精査する必要がある

次にネット上で見られる台湾大学留学に関する情報の性質についてです。

留学斡旋企業は留学のメリットを強調する

留学を斡旋する企業・機関は基本的には留学のメリットを強調するものなので、それをどこまで信じるか、また他の情報と比較して検討することが重要です。


個人のブログにはバイアスがかかっている


こういった企業・機関の他に、個人で発信している台湾の大学正規留学に関するブログも最近は増えてきました。

Twitterにも台湾留学中の人たちが少なからずいますので、それらからも当事者の声を聞くことができます。


留学ブログを書いている人のなかには、『どこどこへ旅行に行ってきたよ』などの非日常をネタにしている人も多いと思いますが、将来台湾留学を考える人にとっては、学業のことやキャンパスの様子などの情報の価値が高いのではないでしょうか?

もちろん自分の書きたいことを書けばいいのですが、大学のサイトには載らないような学生の日常や、感じていることをどんどん発信してほしいと私は考えています。





その一方で、このツイートでも書いていますが、留学ブログとして発信されている情報には実はバイアスがかかっていると言うことを読み手は意識するべきです。

失敗したことや辛いことをブログで公開するのは勇気のいることですし、海外で奮闘している自分を演出するために良い部分しか書かなかったり…。私のブログもそんな感じで生存者バイアスがかかっているものと思って読んでください。

留学に失敗して帰国する人などは、それを発信しない可能性が高いので、ネット上には成功した人の声だけが聞こえるようになるのです。なのでそういった声が全てだと捉えるのは危険です。

私はなんとか台湾大学の人類学系を卒業できましたが、だいぶ同級生のお世話になってきました。大学生活全てが順風満帆だったとも言い難いですし、現在修士課程に入りましたが、自身の実力不足をしみじみと感じスランプに陥っています。(多分そのうちブログ記事にします)

まとめると

  • 留学を斡旋する企業・機関はメリットを強調する
  • 個人ブログでも生存者バイアスがかかっている
  • 読み手はいろんな情報をあつめて精査することが必要


台湾の大学に進学した日本人学生は卒業できているのか


最後に日本人学生は台湾の大学を卒業できているのか、また斡旋会社は卒業までサポートしてくれるのか、台湾の大学には留学生を卒業に導く環境が整っているかには疑問があります。

入学までをサポートするのか、卒業までをサポートするのか




日本人からすると、台湾の大学は学費も安く、語学力も身につく(?)というメリットがあり、進路として台湾の大学を目指す日本人が増えてきました。

台湾の大学としても少子化による学生減少への対策として、外国人学生を入学させることにはメリットがあります。

また、大学の国際ランキングの項目の一つに『国際化』があり、英語で行う授業を増やしたり、外国人の講師や学生を増やすことでポイントアップが望めます。

このような背景もあり、留学を斡旋する団体が現れるのは不思議ではないのですが、サイトから見えるサポート内容が『台湾の大学へ入学させる』ところまで、という印象があります。

これについてすごく昔にTwitterで話を聞いたことがあるのですが、この会社は設立からまだ日が浅いので、ここから台湾の大学に進学して卒業した学生がいない、という話でした。もしそうであればこれから卒業生がでてくるのかなとは思います。この企業は台北にもサポートセンターがあるようで、渡航後にもサポートが受けられるとのことでした(ここの出身者がいればお話をお伺いしてみたいです!)。

それに対して大学側の外国人学生のサポートについてですが、これは大学によりけりだと思います。

台湾大学では毎年のように制度の変更がみられ、外国人学生の中国語の補修に単位が出るようになったり、外国人学生専用の中国語や台湾文化の授業が増えたりしています。その他にも希望者には台湾人のボランティアがついてくれる制度もあります。なので外国人学生を受け入れる体制は年々整いつつあるのでは?という状況です。

大学の体系的なサポート以外に身近なのはやはり同級生のサポートです。授業ではなんどもグループワークの機会がありますし、授業以外でもサークルなどに入れば台湾人の友達ができるでしょう。私もいつも台湾人の同級生や華僑の同級生にお世話になりました。

外国人学生にとって、台湾の大学を卒業するのは難しい?

台湾の大学では外国人学生は少数派です。そしてそれぞれ持っている学力や語学力なども異なりますが、台湾の大学を卒業することはどのくらい難しいことなのでしょうか?



このツイートのあとに調べたら、台湾大学の修士課程の卒業生数の統計資料は見つかりました。台湾人、華僑生、外国人学生別に人数がまとめられていたので、入学者数の資料などがみつかれば、ある程度外国人学生の卒業率がわかりそうです。今後も有力な情報があればシェアしていきます。



統計資料はありませんが、自分の学部時代の同期の場合、わかっている範囲では一年の前期の時点でひとり自主退学して帰国した南米出身の学生がいます。5年もしくは5年半で卒業した日本人の同級生も知っています。現在6年目をやっている同級生もいます。

四年で卒業できればそれに越したことはないのですが、みんな自分のペースで単位をそろえ、卒業している印象です。なので「四年以上かかるかもしれない」と構えておいた方がいいかもしれません。



最後に

一次資料をはじめ、様々な情報源を持ってください

台湾の大学に進学するというのは、ひとつの選択肢としてこれからも増えていくかもしれません。そして進学を考えるうえで情報集めはとても重要です。

このブログでは台湾大学に在学中の私の体験を元に、台湾大学進学に関する情報を扱っていますが、どうしても個人のブログなので私の例が他の人には当てはまらないこともあると思います。なので是非いろんな情報源を持つようにしていただけたらと思います。

また、台湾大学や台湾の他の大学への進学でも同じですが、入学するのがゴールではありません。大学生活を通してなにを学び卒業するかが重要です。語学力の向上だけが大学に通う利点ではありません。

私のもとにいただく質問の大部分は入学に関する内容ですが、これに関しては大学のサイトに書いてあることもありますので、そういった一次資料に当たる習慣をつけると大学生活でも役立ちます。

日本語のサイトだけでなく、台湾の大学のサイトを直接読んだり、疑問があれば直接国際事務所や学科の職員に中国語か英語でメールを送ってみることをおすすめします。

一次情報の集め方をまとめた記事です:
【台湾の大学進学】大学や学科を選ぶ際の情報収集の仕方

台湾の大学に通うことは私にとっては良い経験になっています

外国の大学に通うということは、生活の全てが母語ではない環境でかなりのエネルギーを必要とします。私はそれを良い機会だと捉えていますし、日本では落ちこぼれの部類に入る自分でも台湾では大学に通う機会をはじめ、様々なチャンスを得られたことに感謝しています。

日本の大学に通ったことがないので比較はできませんが、日本で大学に通うならそれにはそれのメリットがあると思います。母語で学べるから効率も良いですし、何よりも過去の研究の累積のおかげで日本語の専門書も豊富です。

台湾では中国語の書籍の少なさや翻訳の不完全さから、授業では英語の教科書を使うことも多いですし、分野によっては専門の教授が台湾にはいない可能性もあります(例えば台湾では考古学者の数が非常に少ないなど)。

このように台湾大学留学のいい面だけでなく、デメリットとなる点も思いついたらまた記事にしていこうと思います。

私が台湾大学の学部に入学を考えていた2011年〜2012年ごろは、今よりも台湾への大学正規留学の情報は限られていました。いま台湾の大学進学を考えている方々にこのブログの情報が参考になれば幸いです。

最近更新が滞りがちですが、これからも台湾大学留学に関する記事を書いていきますのでどうぞよろしくお願いします。





ask.fm





Share:

3 件のコメント:

  1. 台湾大学に外国人枠で入学して、台湾大学の交換留学制度で他国に交換留学することは可能でしょうか?

    返信削除
    返信
    1. 外国人枠で入学した学生も、別の国へ交換留学することはできます。ですが元の国への交換留学はできません(日本人は日本の大学へ交換留学に行くことはできません)

      『Q我在臺大的學籍是外籍生/僑生,可以參加交換生甄選嗎?

      可以。惟應注意:外籍生/僑生無中華民國國籍者,不得選填原國籍國家學校。例如:美國籍者不得選填美國的交換學校;日本籍者不得參加日語組或選填一般組的日本交換學校,依此類推,雙重國籍者不受此規定限制。惟雙重國籍者,若經甄選錄取,不得以與錄取國家相同國籍申請。例如:同時持有美國籍和中華民國國籍,若錄取美國學校,則需以我國國籍申請,依此類推。』
      http://www.oia.ntu.edu.tw/ch/ntu_student/ntu_exchange/exchange-FAQ

      削除
  2. 台湾の私立の毎年世界ランキング入りしている大学に進学しました二年生です。
    英語のスコア低くて国立で入りたい学部の申請が無理だったからですが、国立の方が雰囲気は良かったかもと少し後悔しています。

    頭の中は完全に中国語脳で英語での講義で理解できても即答出来ません。

    中国語は専門用語や先生方はやたら抽象的な言葉を使うので???となっているうちに話が進んでいきます。

    なのでバイト以外の残りの時間はほぼ全て復習の時間にあてています。友達と遊ぶ時間もほぼありません。

    昨年は全科目無事パスしなんとかついて行ってますが、正直辛いです。
    お正月の後に期末テストがあるし、お休みは1日までなので帰国もできないし。
    語学学校時代から計算すると3年お正月に帰っていません。
    この生活がまだ二年半強続きます。

    学費からすべて自分で払っているので派遣で日本語を教えるバイトをしていますが、
    派遣会社に中間マージンが入るのと学生なので足元みられていて時給も安いです。

    バイトするには半年ごとに申請と費用も申請も払うので、日本で国立大入ってバイトした方が学費は安いし良かったかもと今さらながら後悔しています。

    他の知り合いの数人の日本人は、何単位か落としているようで、やはり中国語と英語を介して学ぶのにみんな四苦八苦しています。

    正直、語学学校時代の方が楽しかったです。

    返信削除

Booking.com

Newest Post

台湾大学は優秀な外国人学生を早く獲得したい?2020年度の入学申請期間が3ヶ月早まった件について

毎年9月に新学年が始まる台湾大学ですが、外国人学生の入学申請は例年だとその年の3月上旬が出願締め切りでした。ところが2020年度の入学分からは11月末が締め切り、1月上旬には合格発表されるというスケジュールの前倒しが起こっています。

Booking.com